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NO STYLE 広告論 ■BRAVIAの奇跡(YouTube動画連動)

  

人けのない閑静な住宅街。
その坂道を赤や黄色のスーパーボールが数個、
大きくバウンドしながらゆっくりと下ってくる。


坂を下るスーパーボールは数を増していき
やがて数えきれないほどのボールが
坂道を埋め尽くすように跳ね回るシーンが映し出される。


昨年、世界的にヒットし、カンヌ国際広告祭でゴールドを受賞した
ソニーBRAVIAのCMである。
(実際には金賞だったが、カンヌ前にはこれをグランプリとする下馬評
が高かった)


カラフルなスーパーボールを街中に氾濫させるという
奇抜といえば奇抜、シンプルといえば、これ以上ないくらいシンプルな
アイデアを実際に25万個ものスーパーボールをサンフランシスコの街中に
放り出すという日本では考えられないような大胆な撮影を敢行することで
一篇の詩的映像に定着している。


次世代テレビの液晶の美しさを観る側に説明して「理解させる」のではなく
美しい映像で楽しませながら自ずと「感じさせる」表現が世界の喝采を
浴びたと言っていいだろう。


ホセ・ゴンザレスの歌う映像にピッタリのBGM(「Heartbeats」)も素晴らしいが、
なにより高品質な映像が、ソニーというブランドにマッチしている。
つまりBRAVIAという商品の広告でありながら、企業のフィロソフィーを伝える
ブランド広告になっているのだ。


しかし、BRAVIAが面白いのは、クリエイティブだけではない。
その「伝わり方」も、広告の新しい可能性を感じさせるものとなった。


BRAVIAは、テレビCMとして制作されたにも関わらず
ウェブを通じてオンエア国であるイギリスを飛び越え
瞬く間に世界中に広がっていったのである。
しかもテレビで流される前に。


サンフランシスコのストリートを封鎖し
特製の大砲まで作って大量のスーパーボールを路上に発射するという
撮影現場が人の気を引かないわけはなく、近隣住民がハンディカムで
コッソリ映した自主メイキング映像が、ブームになりつつあったYouTubeなどで
「先行放送」され話題を呼んだのである。


BRAVIAの制作に携わったホアン・キャバラルとクリス・ウィリンガム
(FALLON,London所属)は、このミラクルについて次のように話している。


ホアン:「次の日も撮影なのに、アルゼンチンの友達から、その日撮った
映像が送られてきたんだ。ビックリしたよ」

クリス:「このBalls篇はいい勉強になったね。ネットでどうやって話題を作るか、
撮影をイベント化するにはどうすればいいのかがわかったから。
オンエアするまでの期待感の高め方ひとつで、CMに対するみんなの印象が
ずいぶん変わるんだ」
(月刊「広告批評」06年11月号より)


テレビCMが効かないと言われる時代。
テレビ番組がHDDに録画され、面白くないものは容易にスキップ
されてしまうCM暗黒時代に、BRAVIAは(思いがけず)ネットを活用することで
世界の話題作となった。

06年夏の段階で、900万人がこのCMを観るためにソニーのサイトを訪れたという。
続篇もオンエアされているいま、ひょっとすると億近い数の人々が、このCMを
目にしたかもしれない。


その意味でBRAVIAは、新しいCMのあり方を示唆する例として興味深い。


その表現に着目すると
●「CMのコンテンツ化(長尺化/エンタテインメント化)」の傾向が現れ

メディアの使い方に着目すると
●「広告のウェブ化(インタラクティブ化)」の傾向が顔を出す。


どちらも今後の広告を論じる際に、避けては通れないキーワードだが
新時代を予感させるCMのアピールする商品が、
急速に過去のメディアとなりつつあるテレビであることが、
いささか皮肉な感もある。


この連載では、いま広告に何が生じているか、なるべく具体例を挙げな
がら(時に脱線しながら)、主に上のふたつの座標軸から考えていきたいと思う。


実際のCM、パロディ版、メイキング映像を下記の動画にてご覧ください。

●BRAVIA ball篇(150秒タイプ)


●BRAVIA paint篇


●BRAVIA パロディCM


●BRAVIA メイキング(制作側で撮影したもの)



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