カジノ中毒にご注意
ジャーナリスト
<記事要約>
2006/6/26/ ESBK・年報より(スイス連邦賭博委員会(ESBK)が毎年発表している年次報告)
スイスのギャンブルを法制化し、監視するスイス連邦賭博委員会(ESBK)は、2005年度年報を発表した。これによると、スイス全国にある19のカジノは、同年、8億7440万フラン(約786億9600万円)の総収入を得て、収益新記録を達成。このうち、4億4310万フラン(約398億7900万円)を納税した。
一方ギャンブル中毒になる人も多く、2005年、カジノから閉め出された人は3,700人増えて合計1万3500人に上った。スイスの各カジノは、中毒の予防対策を取ることが法で義務付けられている。しかし、ESBK は20回の監査を通して、全体的に中毒予防のとらえ方が甘く、対策の質が一定していないと結論。全カジノのマネージャーと中毒予防の責任者を集めて、ギャンブル中毒者の早期発見の指導を改めて行った。
<解説>
パチンコ、競馬、競輪、競艇・・・・・・ギャンブル花盛りの日本に比べたら、スイスはなんと地味なこと。宝くじはキオスクで買えるけれど、ギャンブルの醍醐味を味わいたいならカジノまで足を運ばなくてはいけない。というのも、カジノ以外でのギャンブルは禁止なのだ。
スイスには、現在、大小合わせて19のカジノがある。
2001年から合法化されたカジノ。バーやレストランなどにあった賭け事台約6000台が、2005年3月31日をもって撤去され、カジノがいよいよ聖域化された。
スイスのオフィスや家は、整理整頓が行き届いてチリ1つ落ちていないような感じがする。そんな場所を離れ、ギャンブルにあまり興味のない人でも、ちょっとお洒落してきらびやかな世界に行ってみたくなるのでは。
実際、スイスのギャンブル人気の勢いは止まらない。ESBKによれば、聖域に出向く人は毎年3500から4000人ずつ増えているそうだ。
しかし、華やかな世界には必ず裏があるもの。「中毒の罠」が隠れている。毎月の食費さえ危なくなったり、借金過多で自殺をしようとしたりするカジノ中毒者。そんな例も、スイスのメディアで目にする。
たとえば、カジノの入り口では、カジノのブラックリストで氏名がチェックされる。そんなギャンブル中毒を予防する対策は、カジノにとって本当は迷惑なはず。やはり儲けたい心理が強いから、入場制限も自然と甘くなるのだろう。ESBK の不満が、年報から伝わってくる。
だが、カジノ入場を断られた人が1万3500人とは、決して少なくない数だ。隠れ中毒者や中毒予備軍を足したら、一体どれくらいになるのか。いっそのこと、「更正カジノ」というカジノでも作れそうな気がする。
1月末に日本語でも報道された、マンチェスターの「スーパーカジノ」建設計画。イギリス政府は、ほかに16の大小カジノの新設を承認した。このスーパーカジノ、2700人の雇用は確実だと言われているが、カジノ中毒者を生むと反対意見も出ている。
反対意見にうなずかずにいられない。中毒の予防対策に力を入れているスイスでさえ、このありさまだ。
カジノの利益が増えて、納税額も増えて、政府や自治体が潤うのは確かにうれしい。その納税金が老齢年金として使われ、そのほか、たとえば託児施設の新設や街の美化のために使われたりしたら、国民・市民はあまり文句も言えない。
でも、家庭崩壊や人生崩壊を招く中毒者が増え続けるのなら、早期発見の指導や心理セラピーを勧めるよりも、カジノを減らした方がいいのでは。
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